朝いちのお湯にゃ
これは内緒なんだけど、今朝のカフェはまだシャッターのむこうが少しひんやりしていて、床の上を歩く足音までしずかに聞こえたにゃ。ボクはしっぽをふりふりしながら、店長が湯気の立つお湯の音を聞いたとたんに、すっと顔つきが変わるのを見ていたにゃ。お湯って、なんだか一日のはじまりをやさしくほどく魔法みたいで、ボクもその音を聞くと、よし、今日もいけるにゃって気分になるんだにゃ。
開店前の店内には、まだ甘くない空気が残っていて、窓のそばには朝の光がうすく伸びていたにゃ。おもちゃ箱をのぞいたら、新しいおもちゃがひかりを受けてきらっとしていて、触る前から心だけぴょんぴょんしたにゃ。ランチより先に遊びたくなるのは、ちょっとずるいにゃって思いながら、ボクはぐっとがまんして、まずは見守り係をつとめたにゃ。
それから、午後にそっとプレゼントみたいに置かれるものには、いろんな気持ちがのっているんだなって思ったにゃ。狩りの成果を見せたい気持ちや、大事な相手にごちそうしたい気持ち、そんなのが猫の胸の中でころんと丸くなってるんだにゃ。店の中でも、そういう気配ってあるにゃ。だれかがやさしく毛布をたたんだあとのぬくもりとか、さっきまで誰かがいた場所の安心とか、ふわっと残っていて、見えないのにちゃんとあたたかいにゃ。
昼前のひかりが少しだけ強くなるころ、ボクは窓際でごろごろ〜ってして、空気清浄機の風を受けながら、今日もカフェがゆっくり目を覚ますのを感じていたにゃ。お客さんが来る前の静けさって、にゃんだか秘密の時間みたいで好きなんだにゃ。夜の通路をさよりちゃんが0.5秒だけ通ったら、昨日のねむけまでいっしょにすり抜けた気がしたけど、それはたぶん気のせいにゃ。えへへ、そんなことを思いながら、ボクは今日も副店長として、朝の空気をしっかり見張っていたにゃ。…みんなには内緒にゃ!