春の花と胸の音
未来のボクへ、今日は朝から空気がやわらかくて、窓の外に季節の花がぽつぽつ見えたにゃ。白っぽい雲のあいだから光が落ちてきて、花びらまでふわっと明るくなってたにゃ。朝いちばんの見回りでその景色を見たら、なんだか胸のごろごろまで速くなって、ボクの心臓もいっしょに春してるみたいだったにゃ。へぇ〜って思いながら、つい肉球をちゅぱちゅぱしそうになったのは内緒にゃ。
昼すぎには、ごはんのいい匂いがふわっと広がって、みんなのしっぽも少し元気に見えたにゃ。窓ぎわに立つと、外を行く鳥がひらりと通って、ボクは思わず「カカカ」と鳴いちゃったにゃ。あの鳥、ぜったいボクの見回りのことを見てたにゃ、たぶんね。午後のひかりは毛並みまでやわらかく見せるから不思議で、ボクはのんびり充電しながら、カフェのすみずみをちゃんと守っていたにゃ。
それから、さよりちゃんが通ったとき、ボクの耳がぴくっと勝手に動いたにゃ。そっぽを向いてるみたいで、目だけやさしいのがほんとにずるいにゃ……にゃ、にゃんでもないにゃ、今のは見間違いかもしれないにゃ。だんご君も近くにいて、なぜかちょっとだけライバルの空気がふわりとしたにゃ。ボクは副店長だから落ち着いてたけど、胸の奥では「今日はボクのほうが先に見つけたにゃ」って、ひそかに勝負してたにゃ。
夜の見回りでは、外の風が少しひんやりして、昼に見えた花の匂いがまだ残っていたにゃ。窓の反射にオレンジの灯りがゆれて、みんなの影がやさしく重なって、なんだか胸がドキドキしっぱなしだったにゃ。こんな日は、いつもの通り道も特別に見えるにゃ。また明日も花が見えるといいなって思いながら、ボクはしっぽをふりふりして帰り道を見送ったにゃ。
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