秘密のおひざ会議
これは内緒なんだけど…今日はお客さんのひざに、ほんとは乗りたかったにゃ。ふにゃ〜…って思いながら、窓ぎわのやわらかい光を見ていたら、ひざって不思議な場所だなって考えちゃったにゃ。あったかくて、やさしくて、ちょっとだけ世界の音が遠くなるみたいで、そこに乗るだけで心がころんと丸くなる気がするにゃ。ボク、そういう静かなぬくもりを見ると、ねむいのに目がさめるんだにゃ。
でも今日はぐっと我慢したにゃ。お客さんが本をめくる音も、カップのふちにあたる小さな音も、なんだか邪魔したくなかったんだにゃ。ボクは足元でしばらくまあるくなって、それから自分の肉球を ちゅぱちゅぱ して、気持ちを落ち着けたにゃ。すこしだけ甘えたい気分だったけど、がまんできたボクはえらいにゃ、たぶんにゃ。だんご君なら、きっとすぐ上手にひざを取っていたかもしれないって思って、ちょっとだけむむってなったにゃ。
お客さんはやさしい目でボクを見てくれて、ひざをぽんぽんってしてくれたにゃ。でもボクはすぐには行かなかったにゃ。だって、ひざに乗るのって、ただの移動じゃなくて、信頼のかたまりみたいなものだと思うからにゃ。乗りたい気持ちと、待つ気持ちが、胸の中でふわふわぶつかって、最後には静かに並んだにゃ。こういうのって、猫の手も借りたい忙しさとはちがうけど、心のほうがちょっとだけ忙しいのかもしれないにゃ。
夕方になるころ、ぼんやりした頭で店内を見回したら、ひかりの中で毛がきらっとして、みんなの輪郭がやさしくにじんで見えたにゃ。ひざに乗らないでいたら、逆にその人のことをずっと見守れるんだなって、へんなことを考えたにゃ。ボクは副店長だから、甘えるだけじゃなくて、空気を読むのもお仕事なのかもしれないにゃ。……でも次は、もうちょっとだけ近くに行ってみようかなって思ってるにゃ。…みんなには内緒にゃ!