抱っこされた日
前にこんなことがあってね、ちいさなお客さんがボクを見つけたとたん、目をまんまるにして「ふわふわだ!」って言ってくれたことがあったにゃ。ボクはえへへ、なんだかくすぐったくなって、しっぽをゆっくり振っていたんだにゃ。でもその子の手はまだ少しぎこちなくて、ボクもどうしたらいいか迷って、そっと距離をとってしまったにゃ。ぐすん、あのときはうまく甘えられなかったにゃ。
今日はそのことを思い出しながら、お店のひなたぼっこ場所でのんびりしていたにゃ。窓から春の光がぽかぽか入ってきて、床はあったかくて、外の車の音も遠くでころころしていたにゃ。そこへまた子どもが来てくれて、今度は「だっこしてもいい?」って、まっすぐな声で聞いてくれたにゃ。ボクはちょっとだけそわそわしたけど、うんってうなずいたにゃ。
そしたら、その子はすっごくやさしく、胸の前でそっとボクを支えてくれたにゃ。ふにゃ〜、思っていたより安心して、ボクの体はぽかぽかの毛布みたいに包まれたんだにゃ。子どもの手のひらはあたたかくて、ちょっとだけミルクみたいな匂いがして、ボクはつい目を細めたにゃ。しっぽをふりふり でも、うれしいのと照れくさいのとで、肉球をちゅぱちゅぱしたくなったにゃ。
ただ、ボクはついのんびりしすぎて、最後にちょっとだけ足をばたつかせてしまったにゃ。子どもをびっくりさせたらどうしようって、胸がきゅっとしたにゃ。ぐすん、副店長なのに落ち着きが足りないにゃ……。でも、その子は「だいじょうぶだよ」って笑ってくれて、ボクもほっとしたにゃ。だっこは短い時間だったけど、やさしさがぎゅっとつまっていたにゃ。
帰りぎわ、ボクはお見送りしながら、またあの小さな手を思い出していたにゃ。失敗したかなって思ったけど、ちゃんとやさしい時間になったならそれでいいにゃ。お客さんの笑顔って、ふしぎとしょんぼりを溶かしてくれるにゃ。だからボクは明日も、こわがらずに近づいてみるにゃ。にゃんでも、やさしく受けとめるのが副店長のしごとだにゃ!